研究概要 |
本年度は,保存/散逸型微分方程式に対する離散変分法について,主に時間方向の高精度化に関する研究を行った.具体的には以下の2点について新しい結果を得た. (1)composition methodによる高次化の問題点に関する研究 主に常微分方程式の場合であるが,時間対称な数値解法がひとつあるとき,それを"composition method"と呼ばれる方法で高次化できることが従来から知られていた.これは基本となる解法を時間刻み幅を変えて何度も呼び出すことで,結果として高い精度を得るものである.注目すべき点として,もとの解法が保存解法の場合,高次化された結果の解法も保存的となる.散逸系に対してはこの性質は理論的には保証されないことも広く認識されていたが,実際に使用するとどのような結果に至るかは十分認識されていなかった. 本研究ではこの点に関し,数値的・理論的な観点からいくつかの評価を行い,簡単な散逸問題でも実際に散逸性が崩れうることを確認した.ほとんどの場合この崩れは局所的であるが,特定の問題では,大域的にも散逸性が崩れることも確認した.従って,やはり散逸系に対してはcomposition methodは安易に使用するべきでないと考えられる. (2)次数無制限の時間高精度化 研究代表者により,6次までの保存/散逸数値解法は従来より提案されていたが,その手法では7次以上の解法を構成することができなかった.そこで本年度の研究では,従来法に一般化BDF解法の考え方を援用し,この次数制限の突破を行った.実際に得られたスキームを簡単な系に適用し,7次以上でも安定して保存・散逸解法が構成できることを確認した. しかし,新手法は計算コストが莫大にかかる欠点があり,この点をさらに克服できるかどうか,来年度以降の研究で調べる必要がある.
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