研究概要 |
今年度は脳波(ElectroEncephaloGraphy:EEG),脳磁場(MagnetoEncephaloGraphy:MEG)逆問題に応用される電流双極子推定,および漏洩磁束探傷や位置計測システムに応用される磁気双極子推定に関し,解析的・もしくはごく小数回の反復で収束する高速・高精度アルゴリズムの確立と,数値シミュレーションおよび実験による検証を行った.標記課題のうち最も基礎的なポアソン方程式のソース項同定手法を構築した,と位置付けられる. まず電流双極子推定に関しては,空間中の一点における電位,および磁場の複素形式の空間高階微分を観測量として,双極子の位置・モーメントを陽に再構成する手法を導いた.複素形式の微分を複素勾配ということにする.電位の複素勾配は,領域境界上の電位にルジャンドル陪関数を重みとする表面積分と等価であることを示し,EEGに基づき計測できることを明らかにした.また磁場の複素勾配は,通常用いられるグラジオメータによって計測できる.双極子の個数を1個または2個としたとき,0階から3階までの複素勾配を用い個数まで含めて双極子パラメタが推定できることを数値シミュレーションにより示した. また磁気双極子推走に関しては,磁場の複素勾配のみを観測量とし,反復演算により双極子位置を同定するアルゴリズムを導いた.本アルゴリズムは,双極子位置をリーマン球面に射影した位置に関する力学系として表現され,磁場計測用コイルの軸付近(見こみ角40°程度)では収束することを示した.更に0階から2階の複素勾配計測用コイルを作製して磁気双極子を定位する検証実験を行い,センサ-ソース同距離5[cm]程度で誤差1[mm]程度の精度で定位可能であることを確認した.
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