研究概要 |
非比例・多軸繰返し負荷を受ける構造部材の設計には,従来米国機械学会(ASME)の設計基準が長年使用されてきたが,この設計基準では必ずしも安全側の設計とはならず,負荷経路によっては顕著に危険側予測を与えることが指摘されている.また,非比例負荷による寿命低下は応力増加と深い関係があるとともに,寿命低下および応力増加の程度は負荷経路および材料に依存することが分かっている.このような非比例・多軸低サイクル疲労寿命および変形特性から,これまでに,イギリスのBrownや米国のSocieらによって応力増加を加味したいくつかの寿命評価モデルが提案されている.しかしながら,ASME設計基準に代わる寿命評価モデルの完成の域には至っていないのが現状である.その理由として,これらの寿命評価モデルに含まれる応力増加や材料依存性等を示す定数の決定方法が必ずしも容易でないことや,適用できる負荷経路が限定されている点にある.その結果,これまでに提案されてきた各寿命評価モデルが新たな設計基準として採用されなかったものと考えられる. 本研究では,非比例多軸負荷を受ける機器構造物の世界的な強度設計基準となっているASMEの設計基準に申請者が提案してきた非比例多軸疲労寿命評価式Δε_<NP>=(1+αf_<NP>)Δε_Iの採用を計ることにある.すなわち,設計技術者が実際に非比例多軸負荷の影響を考慮した寿命評価をおこなうために,初年度の研究として寿命評価式の補強および同評価式による比例および非比例多軸負荷の影響を考慮した実設計を踏まえた低サイクル疲労強度評価の一つの手順を示した.
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