研究概要 |
原子力プラントにおいて原子力圧力容器やガスタービンのような熱応力と機械的応力が重畳するような場合に,多軸負荷の繰返し損傷を受ける場合がある.とくに応力やひずみの主軸方向が時間的に変化する非比例多軸負荷の疲労条件下においては,負荷経路によっては破損寿命が著しく低下することが報告されている.したがって,このような多軸負荷下における原子力構造材料の破損寿命の把握および比例および非比例多軸疲労下での適切な寿命評価法を開発することは,多軸負荷を受ける高温機器の設計や維持の健全性・安全性の保障にとって重要であり,設計および維持管理の技術者からも強い要望がある.しかしながら,いくつかの寿命評価モデルが提案されているが,既存基準等に代わる適切な寿命評価モデルの完成の域には至っていないのが実状である.その理由として,(1)非比例多軸負荷による疲労強度低下のメカニズムが明確になっていない.(2)寿命に及ぼす負荷経路の影響を考察するためには,十分な実験データがない.(3)研究室レベルでの寿命評価モデルはいくつかあるが,それを実際の設計に採用するための強化・修正を要する.(4)言い換えると,設計現場で容易に使える寿命評価の具体的な手法の提示が必要,等が上げられる.適切な多軸疲労設計基準を構築する上で,これらの諸問題の解決方法,さらに,まだ表面化していない設計現場からの要求や問題点を早急に調査研究する必要がある.本年度の研究では,多軸負荷における疲労設計基準の開発の一環として,非比例負荷を含む応力・ひずみの定義方法および設計手順の提案を行った.また,本研究分野での今後の解決すべき問題点の調査および課題を提示した.
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