研究概要 |
ガイド波と呼ばれる超音波モードを用いた配管などの大型構造物の高速非破壊評価法の開発を行った.ガイド波は棒状材料の長手方向に伝播する超音波モードであり,多重モードが重畳し,それぞれが分散性を有するという複雑さを持つ.本年度の当研究では,これらの複雑さを解決するために,モード抽出・分離技術の確立,分散性除去手法の確立,さらには数値計算シミュレーションソフトの開発を行った. モードの抽出・分離技術はパイプ中を伝播するガイド波のモードごとによる伝播形態の違いを利用している.受信センサーをパイプの円周方向に多数設置し,それぞれからの波形に適切な重み処理を施し,積算することによってあらゆるモードの抽出が理論的に可能であることを示し,4つのセンサーを用いて実験的に検証した.分散性除去手法は,数値計算によって求められたガイド波速度の情報から各モードの伝播の様子を推測することによって実現できた.各モードごとに分離された波形をそのモードの速度情報を用いて,時間をさかのぼると,各時刻での各モードの波形が得られる.発信時刻までさかのぼったとき,発信した波形が得られ,分散性が完全に除去される.これら2つの実験的手法をサポートする形で我々のもつ数値計算技術を利用したが,その技術を一般の現場技術者もも用いることができるよう,インターフェイス部分および表示部分を作成し,ソフトウェア化を行った. ガイド波を利用した非破壊評価のための要素技術の確立はほぼ終了したので,次年度はこれらの組み合わせによる検査システムの開発を行っていく.
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