研究概要 |
新規高性能繊維強化複合材料の創製に不可欠な界面の最適設計法として,研究代表者らの開発した,微視的損傷(繊維破断,マトリックスき裂,界面はく離)およびこれらの力学的相互作用をメゾメカニクスに基づいて定性的に記述できる2次元破壊シミュレーション法(シェアラグ-モンテカルロシミュレーション法)が挙げられる.本研究では,最適界面の定量的な決定を実現するために,数本の繊維と樹脂を用いて,内部損傷のその場観察が可能な界面状態の異なる2種類のモデル繊維強化複合材料を作製し,実際の材料内部の微視的かつ複雑な損傷過程を詳細にその場観察する.また,3次元有限要素解析を行い,(1)複合材料中で繊維を迂回して3次元的に進展するマトリックスき裂先端の応力集中・き裂の回り込みを2次元モデルでも表現できるよう数理モデル化する.(2)界面はく離じん性と界面摩擦応力を分離して評価する.(3)得られた情報をシェアラグ-モンテカルロシミュレーション法に組み込み,簡便でかつ精度の高い擬2次元シミュレーション法を開発する.本年度の成果は以下のように要約される. 1)平行かつ等間隔に一列配置したボロン繊維10本と透明なエポキシ樹脂を用いて,材料内部の微視的損傷過程のその場観察が可能なモデル複合材料を作製することに成功した.また,繊維表面の離型処理により意図的に界面の特性のみを制御したモデル複合材料を作製し,微視的損傷過程を比較することにより,単一のマトリックスき裂・界面はく離の素過程およびこれらの力学的相互作用をその場観察することができた. 2)その場観察結果を基に,3次元有限要素解析を行い,界面特性を制御した2種類のモデル複合材料における界面はく離じん性値と界面摩擦応力を分離して定量評価した.その結果,繊維表面の離型処理により,界面はく離じん性値および界面での摩擦係数が0.4倍に小さくなったことが明らかとなった.
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