研究概要 |
本年度は,薄膜構造体の強度評価を行うために,球圧子を用いたインデンテーション試験装置の作製を行った.この試験機は,積層圧電セラミックスをアクチュエーターとして採用し,AD/DAボードを介して試験荷重をパソコンから制御できるようにした.また,押込み荷重に対する押込み深さを検出するために,レーザー変位計を取り付け,押込み荷重-変位関係を調べることが出来るようにした.製作した試験機を用いて,ダイヤモンド・ライク・カーボンを蒸着した単結晶シリコンにインデンテーション試験を行い,荷重-変位関係を調べた.その際,薄膜の膜厚の影響を調べるために,膜厚の異なる3種の試料に対して試験を行った.試験終了後の試料に対して,集束イオンビーム(FIB)加工装置により,試料内部の観察を行い,薄膜と基材の界面の様相の観察を行った.その結果,試験に用いたDLC材では,薄膜と基材の界面にはく離が生じないことが確かめられた.試験で得られた荷重-変位関係および薄膜と基材の界面状態の観察をもとに,DLC薄膜構造体の押込み荷重負荷時の応力状態を調べ,薄膜の強度評価を行った. それと同時に,現有のSEAMシステムでは,試験片内部の情報を得るには,精度が十分ではないため,SEAMの電子線照射による試験片からの超音波信号の増幅を行うための増幅回路の試作を行った.SEAMからの超音波信号は非常に微弱で,周波数が高いため,超音波信号検出器であるPZTの信号をトランジスタを用いたヘッドアンプによりインピーダンス変換を行うとともに増幅し,ノイズの影響を受けにくくした.さらに,試料ホルダーと増幅アンプ一体型の信号検出器を作製し,電子線誘起超音波信号の検出精度を向上させた.
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