研究概要 |
形状記憶合金複合材料は用いる強化繊維とマトリックスの組合わせ(繊維の体積率,マトリックスのヤング率など)により,その特殊機能(内部圧縮応力,変形など)が異なる.したがって,形状記憶合金複合材料の実用化を考えた場合,材料の組合わせによる特殊機能変化の系統的な把握が必要となる.そこで,ここでは内部応力と変形に注目し,繊維の体積率,マトリックスのヤング率を変えたときの特殊機能の変化を系統的にまとめた.この調査は,解析の面から行った.これにより,「実構造材料に対して形状記憶合金の含有量・マトリックスのヤング率が分かれば,得られる内部応力と変形も予測可能」となる. 一本の形状記憶合金繊維(NiTi)を弾性マトリックス(複合材料の加熱後も弾性域にある熱硬化性樹脂)中に埋め込んだ形状記憶合金複合材料を作製した. 形状記憶合金複合材料の内部圧縮応力および変形は材料内で一様とはならず,強化繊維の繊維方向および繊維周りの方向に分布を持つ.そこで,本研究では,加熱前後の複合材料の内部応力を透過光弾性法,変形をデジタル画像相関法を用いて計測することを試みた.さらに,赤外放射温度測定法(サーモグラフィ)を用いて複合材料表面の温度分布も測定した.計測システムはLab Viewにより構築した. また,複合材料だけでなく,マトリックスとして用いた高分子材料(粘弾塑性材料)および強化繊維として用いたNiTi形状記憶合金についてもそれぞれ研究を行った.粘弾塑性材料に対しては,その負荷・除荷挙動について実験および解析の両面から詳細に検討を試みた.そして,形状記憶合金については,材料に生じる不均一変形に注目し,実験によりマクロな変形挙動と不均一変形挙動の関係を調査・検討した. 形状記憶合金複合材料だけでなく,形状記憶合金および粘弾塑性材料について研究を進めることによって,より多くの知見が得られたものと考えられる.
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