研究概要 |
【1】材料の最適設計の第1項目として,微小材料の機械的特性についての検討を,繊維配向を有する多結晶体の3次元有限要素法モデルを作成し,単純引張応力状態下ならびに平面ひずみ状態下での弾性解析をもとに行った.配向は<001>繊維配向とランダムと2種類を検討した. 【2】結晶粒形状が機械的特性に及ぼす影響として,2種類の3次元結晶粒形状について解析を行った.1種類は一結晶粒が正六面体のもの,他方は正四角錐6つと正六角錐8つを組合せてできる十四面体のものである.繊維配向によらず,二つの結晶粒モデルによる多結晶体のヤング率,ポアソン比はそれぞれほぼ同じ値となり,形状依存性が小さいことが分かった. 【3】各パラメータのばらつきの指標として平均値に対する標準偏差の比(COV)をとった.COVが0.02以下でマクロな(バルク材の)特性を有すると仮定すると,ヤング率がマクロな特性と見なせるのに必要な粒子数は,単軸引張りで120(一辺5結晶粒子)以上,平面ひずみで232(一辺7結晶粒子)以上となり,境界条件により異なることが分かった.ポアソン比は平面ひずみの方が必要とする粒子数が少なくなった. 【4】材料の最適設計の第2項目として強度・破壊特性における必要特性発現手法の確立の導入として,2次元多結晶体におけるき裂発生,連結,進展シミュレーションを行った.結晶粒一つ一つに結晶の方位をランダムに与え,結晶粒界の強度も2母数ワイブル分布に従うようにランダムに導入して弾性解析を行った. 【5】強度のばらつき(形状母数)の違いによりき裂の発生過程が異なることが分かった.ばらつきが大きい方が広範囲にき裂が発生し,一つのき裂が材料の破壊に繋がる致命的欠陥になりにくいことが分かった.一方で,き裂の連結,進展の過程においてブリッジング,ロッキングが観察され,これらの定量的評価が今後の課題であることが分かった.
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