研究概要 |
本年度の研究実績は下記の5項目に大別される. (1)圧電セラミックスの微視不均質組織観察・測定 供試体として単結晶体の物性が既知であるチタン酸バリウムを採用し,ハイパワースコープ顕微鏡による不均質組織の観察,SEM・EBSD装置による結晶方位分布の計測を実施した結果,不均質組織におけるμmオーダーの結晶方位分布の計測に成功した.特に,製造法に起因する供試体端部の結晶方位特異性を発見した. (2)圧電セラミックスの巨視特性評価実験 LCRメータを用いて供試体の共振周波数を測定し,カタログ値と同程度の弾性コンプライアンス,誘電率および圧電定数が評価できた. (3)微視不均質構造の有限要素モデリング手法の構築 項目(1)で得られた結晶方位分布をミクロ構造の有限要素モデルに導入し,結晶均質化法による巨視特性予測を行った.特に,妥当な特性予測のためのモデリング条件として結晶方位計測データのサンプリング条件を得た. (4)PZT単結晶体の物性同定 単結晶体の創製が困難でその物性が不明であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に対して,結晶均質化法による物性同定法を考案し,単結晶体の物性を同定した.これにより次年度に計画するマルチスケール解析に必要となる入力データを得た. (5)巨視特性の向上のための最適結晶方位設計の有効性確認 次年度に予定する最適結晶方位設計の効果を予め把握するため,巨視圧電定数の最大化を目的として最急降下法による最適化を試み,結晶方位制御により既存の特性値を30%程度上回る巨視特性発現が可能であることが判明した.
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