単結晶フッ化カルシウム(CaF_2、蛍石)は紫外域から赤外域の広範囲にわたり優れた透過性を持つため、暗視野集光デバイスや超短波長ステッパー用レンズの基板材料として使用されている。また、波長による異常分散性があり、アッベ数が大きいために、高精度光学系の色消しレンズとしても使用されている。最近、集光効率の向上やシステムの小型化と軽量化を目的として、単結晶フッ化カルシウム製フレネルレンズの加工が要求されている。本研究では、ダイヤモンドバイトを用いて単結晶CaF_2基板に微細溝を形成させ、数μmから数十μmレベルの回折面をもつフレネルレンズを製作することを目的とした。平成16年度では、下記の項目について研究開発を行った。 (1)単結晶CaF_2フレネルレンズの切削実験 単結晶CaF_2基板に微細溝の切削加工実験を行った。まず、平面切削の基礎実験によって得られた最適加工条件をフレネルレンズの切削に適用し、3次元切削の最適加工条件を定量的に検討した。そして、加工したフレネルレンズの形状誤差および表面粗さを測定し、誤差形成要因について検討した。 (2)結晶異方性を抑制するための解析および実験 まず平面切削に及ぼす結晶異方性の影響および均一な延性切削面を得るための臨界切削条件を明らかにした。そして結晶学理論を用いた解析手法によって、フレネルレンズ加工における結晶異方性の影響を解析し、均一な延性切削面を得るための臨界切削条件の予測を行った。さらに、切削実験結果との比較により解析結果の検証を行った。 (3)工具摩耗を最小にする加工条件の検討 異なる4種類の切削雰囲気においてフレネルレンズの切削加工を行い、ダイヤモンド工具寿命が最大となる加工雰囲気およびその供給方式を実験的に検討した。
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