研究概要 |
本研究では、楕円振動切削加工法および超精密楕円振動制御技術を適用し、一般的には不可能と考えられる超硬合金のダイヤモンド切削を試みた. バインダ金属を含有する超硬合金とバインダレス超硬合金に対して基礎的な溝加工実験および平面加工実験を行い,超精密超音波振動切削加工における各種条件(振動条件,加工条件)の及ぼす影響について検討を行った.バインダ金属を含有する超硬合金の溝加工実験の結果,通常の切削に比べて楕円振動切削では比切削抵抗が数十分の一に減少し,仕上げ面性状が大幅に向上することを確認した.特に,切込み方向の振動振幅が小さく,速度比(振動速度/切削速度)が大きい加工条件の楕円振動切削において良好な延性モード加工が可能となることを確認した.一方,切込み方向に振動振幅が大きい振動条件では,超硬微粒子の脱落と見られる欠陥が多発し,逆に通常の切削よりも仕上げ面性状が劣化してしまうことがわかった.これは楕円振動切削の切りくず引き上げ動作により被削材が脱落してしまうためであると考えられる.また,ガラスや単結晶材料などの硬脆材料における切削と異なり,明確な延性-脆性モードの遷移領域はなく,数ミクロン程度の実用的な切込み条件においても良好な延性モード加工を行い得ることを確認した. バインダ金属を含有しない超硬合金においては,脆性破壊が発生しやすくバインダ金属を含有する場合と比較して良好な延性モード加工が困難である傾向を確認した. バインダ金属を含有する超硬合金に対して平面加工を行った結果,通常のダイヤモンド切削と比較して楕円振動切削により良好な40nmRy程度の仕上げ面性状が得られるが,工具の損耗が激しく微小な領域の加工にしか適用できないことがわかった.
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