研究概要 |
レーザ光の波長に対して透明な樹脂と不透明な樹脂を重ね合わせて透明樹脂の側からレーザ光を照射すると,透明樹脂を透過したレーザ光が不透明樹脂の表面で吸収されて樹脂が発熱するため,2枚の樹脂が接合界面で局所的に溶融して接合される.この技術はレーザ溶着法と呼ばれ近年その利用が拡大しているが,その適用は熱的特性が等しい同種の熱可塑性樹脂の接合に限定されている.本研究ではこの手法を異種材料の接合に応用することを目的として,金属と熱可塑性樹脂の接合を試みた.実験には波長820nm,最大出力15Wの半導体レーザを使用し,スズ板(厚さ0.2mm)とアクリル板(厚さ3.0mm)の接合を行った。また,接合した試料に対してせん断試験を行うことで接合強度を評価した. はじめに金属表面におけるレーザ光吸収率を測定したところ,圧延したままの面ではレーザ光の大部分が反射されるが,サンドペーパーによって金属表面を処理することでレーザ光が吸収されるようになり,処理する番手が大きいほど吸収率が大きいことがわかった.次に,サンドペーパーによって接合画を処理したスズと透明アクリルの接合を試みた結果,この方法により金属と樹脂の接合が可能であるごとが確認された.そして,金属表面を処理するサンドペーパーの番手が小さいほど接合強度が大きいことがわかった.この結果とせん断試験後の破断面の顕微鏡観察の結果から,本方法における接合メカニズムは次のようなアンカー効果であると推定された.すなわち,金属側はレーザ光を吸収して発熱するが溶融するまでには至らないため,サンドペーパーによって付与された接合面の凹凸は保持されている.このとき樹脂側の接合面近傍も金属からの伝熱によって温度が上昇するため,軟化あるいは溶融した樹脂が金属側の凹部に入り込むことでアンカー効果が生じると考えられる.
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