研究概要 |
物理的・化学的特性に優れるステンレス鋼やチタン合金等の高機能性・難削材料を用いた精密製品や部品を製作することは,資源の乏しい我が国において重要な加工技術である.特に,難削材に対してナノメートル・オーダーで仕上面を創成する超精密切削加工技術は,我が国において今後の技術力において重要性を持ってくる.しかしながら,難削材料の超精密切削加工は,現在でも,極めて困難な状況にある.アルミニウムやプラスチック等,軟質材料については,超精密切削用ダイヤモンドバイトによる加工技術が確立されている.一方,難削材に対しては,通常の手法では,急速な工具摩耗により,非常に小さな工作物も加工できていない. そこで,研究代表者らは,市販される各種の普通切削用工具を用いて実験的な検討を重ねてきた結果,PVD法によるコーティング超硬工具が難削材の超精密切削加工において有効性を持つことを見出している.本研究では,チタン合金やステンレス鋼などの難削材に対して,ナノメートルオーダーの仕上面創成を安定した切削加工状態で実現することを目指して,切削中の加工状態を監視するための計測システム構築することを目的とした.今年度は,ステンレス鋼およびチタン合金における各種切削条件下での切削抵抗を計測し,仕上面粗さとの関係を実験的に検討した.難削材の超精密切削における切削背分力は,一般的な通常の切削加工とは異なり,主分力よりも大きくなった.仕上面粗さが悪化した場合には,切削抵抗が大きな変動を示す上にさらに大きな値となった.それらの原因は工具刃先における凝着摩耗の進行によるものと推測して,工具刃先部における工具コーティング層の摩耗についてをAEセンサで計測する試みも行った.良好な仕上面が得られる加工条件では,AE信号の検出量が減る上に,切削抵抗も小さくなることがわかった.
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