研究概要 |
本研究は生体内で使用する人工関節,インプラント,医療用マイクロ部品を構成するバイオマテリアルを,高精度に加工すると同時に所望の表面機能(耐食性,耐摩耗性)を付与し得る技術の開発を目的として行っている.具体的には15年度で下記のような成果が得られた. 1.バイオマテリアルのためのナノ表面加工技術の開発: バイオマテリアルのナノレベルな加工技術確立のために,申請者らがこれまで進めてきた超精密鏡面研削技術をアップグレードさせ適用した.金属系ボンド材でダイヤモンド粒を固めた超微粒ダイヤモンド砥石を使用し,バイオマテリアルの幾何学的表面性状を数ナノメートルの高品位に仕上げることにほぼ成功している. 2.バイオマテリアルのインプロセス表面改質加工法の開発: 研削中にバイオマテリアル表面に強固な酸化皮膜を積極的かつ効率良く生成することを狙った.具体的には,研削液中に水酸化イオンを過飽和に発生させ,それをワーク表面(+電位)に電気泳動により安定な酸化皮膜として定着させた.本原理を研削加工中にインプロセスで実現することで,バイオマテリアルの表面改質が可能なプロセスおよび制御技術確立に向けた基礎データを十分に得た. 3.バイオマテリアルのナノ表面改質加工面の機能評価: バイオマテリアルの使用寿命の長期化と安全性を確保するためには,本年度は,上記1,2のプロセスで創製したバイオマテリアルを,生体内を模擬した試験システム中に埋入させ,バイオマテリアルの表面局所領域の化学反応をシミュレートした耐食性評価試験等の実験的検証を行った.その結果,本技術で創製したバイオマテリアルは優れた生態適合性を有することが明らかとなった. 次年度は,15年度研究計画1〜3より得られた結果をフィードバックしつつ統合化を図り,バイオマテリアルのナノ表面改質加工技術,人に優しいバイオコンポーネントの生産技術の確立に向けた成果を狙う.
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