研究概要 |
トライボ分子膜の機能を定量的に解明するために,高い潤滑性能をもつフッ素系高分子液体(PFPE)を対象として,単層から数層までの分子膜が表面エネルギーの低い領域から高い領域へ流動するナノ流動現象に着目する.このようなトライボ分子潤滑膜のナノ流動現象を直接可視化するために,マイケルソン顕微干渉法に位相シフト法を適用することによって干渉縞画像を位相画像に変換して,潤滑膜の表面形状を三次元画像として測定する方法を開発した.これまでに得られた結果を要約すると以下のとおりである. (1)光源として低コヒーレンスの白色光を用い,白色の球面光を,準単色光の平行光に変換する光学系を構成した.これにより,コントラストの高い干渉縞を形成し,散乱光や迷光に起因する干渉ノイズを効果的に抑圧して,干渉縞画像のSN比を飛躍的に向上させた. (2)リニーク型マイケルソン干渉系において,参照ミラーを平行板ばねによる平行駆動を行う超高精度のピエゾアクチュエータに搭載して,参照ミラーを平行微小駆動することにより,干渉縞画像内において均一な位相シフトを可能とする干渉測定系を実現した. (3)位置検出素子PSD(position sensitive detector)を用いて縞位置を検出し,その出力により参照面に取り付けたピエゾアクチュエータをフィードバックするフリンジフォローイング制御を導入して,外界振動や測定系の熱変形に起因する干渉縞の乱れを抑圧した. (4)フリンジフォローイングとPSDの微小送り機構を併用することにより,高精度な位相シフトを実現し,位相送り誤差に起因する測定誤差を最小化した. (6)透明ディスクを用いて,背面のダイヤモンドライクカーボン膜上に段差状の潤滑膜を塗布し,段差境界からの表面流動現象を実測して,本手法により三次元測定が可能であることを確認した.
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