研究概要 |
1.金属-油界面に発生する流動帯電の測定 VG46マシン油とステンレス製の寸法の異なるパイプ,板,金網に発生する流動帯電の測定を行った.金属部は負に油は正に帯電する現象はどの流路でも同じであったが,ステップ的に油を流し始めた瞬間に電流は最大値となりその後一定値へと収束すること,その後流れを急にせき止めると,逆方向の電荷が発生し徐々に零に近づくことが分かった.流れ始めの電荷量は,金属と油の接触面積が大きいほど多く,流れ方向の距離が短い薄板や金網では,短時間で電流値が一定となることが分かった.これは,急激な油の流れによって金属-油界面での電荷のバランスが崩れ,多量の電荷が発生するものの,発生した電荷が下流部で緩和されることによって金属部から取り出される電荷量は減少し,やがて一定値に近づくためであると考えられる.さらに流れを急にせき止めると,発生した電荷が一度に緩和されるため,逆極性の電流が観察されたと考えられる.この結果を流路中の接触面積と,流れ方向の流路長さを平均流速で除した平均接触時間で評価してみたところ,ほとんどの実験結果がひとつの曲線上にのる傾向があることが分かった.これはある時間以上金属部に接触することによって発生する電荷がほぼ除去されることを意味し,条件をさらに詳しく調べることによって,油中の電荷除去が可能となることがわかった. 2.油圧管路に発生する帯電量の測定 油圧管路中に取り付けた金属性パイプに発生する流動帯電を測定するために装置を製作し実験を行った.しかし緩和パイプ,緩和タンクを用いてもパイプ上流部で発生する電荷を十分除去することができなかった.検討した結果,絶縁体として用いているアクリル樹脂と油との接触面積の増加が問題となることが分かり,金属だけではなく絶縁体と油との間の帯電現象についても詳しく調べる必要があるという新たな研究課題を見出した.
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