研究概要 |
本研究は,球状回転子と振動子からなり,回転子の直交3軸回りの運動を振動子の1つの振動モードによって実現する多自由度超音波モータに関する研究である.すなわち,従来の超音波モータと比べて,多自由度運動を実現できる点,振動モードの縮退した振動子を設計する必要がない点が大きな特徴である.本年度の実績は以下のとおりである. はじめに,単一振動モードによる回転子駆動の駆動特性を数値計算によって明らかにした.すなわち,単一振動モードにより往復運動する振動子上の突起と回転子との接触部を離散的な接触点と線形ばねによってモデル化し,振動子・回転子間の摩擦力を考慮した数値解析モデルを構築した.本モデルを用いて振動子上の突起部における振動方向,振幅などをパラメータとして回転子の駆動特性を計算した.これにより,単一振動モードによって回転子を駆動できることを明らかになり,突起部での振動方向が駆動特性に大きく影響することがわかった. つぎに,上記の数値解析の結果を基に,振動子の3つの振動モードを選択的に励振することにより,球状回転子の多自由度回転運動を実現する多自由度超音波モータを設計した.本モータはマトリクス状に配置された4つの平板状振動子と,その上に置かれた球状回転子から構成されている.各振動子に選択的に励振した振動モードを組み合わせることにより,回転子に多自由度運動を実現できることを確認した. 以上のように,複数の振動子にそれぞれ1つの振動モードを励振し,選択的に組み合わせることにより多自由度運動を実現する超音波モータの実現のために,駆動特性を明らかにする数値解析法,およびモータのプロトタイプを開発した.
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