研究概要 |
本年度では,植物系生分解性潤滑油の耐摩耗性の向上を目的として,硫黄系およびリン系の代表的な耐摩耗添加剤である,DBDS(ジベンジルジスルフィド)およびDBPo(ホスホン酸ジブチル)を添加した植物油(大豆油,なたね油,コーン油)の耐摩耗性および耐焼付き性能について,曽田式四球試験機を使用して検討した.さらに,植物油とタービン油の耐焼付き性能について比較・検討した結果,以下のことが明らかになった. 1.DBDS添加油の場合には,運転の継続は可能であるものの,接触表面の局所的な焼付きによる軽微な表面損傷(初期焼付き)を生じたが,DBPo添加油の場合には,初期焼付きは発生しない. 2.DBPoを添加したなたね油の場合の摩擦係数は,他の添加油と比して最も小さく,焼付き直前の摩擦係数は約0.05であった. 3.DBDSおよびDBPo添加油の場合の試験球の本体温度上昇は基油のそれと比して低く,耐摩耗添加剤は本体温度上昇の低下に効果がある. 4.基油に比してDBPo添加油の摩耗こんは小さく,しかもDBDS添加油の摩耗こんよりも小さく現れており,DBPoはDBDSに比して耐摩耗性に優れた添加剤である. 5.DBDS添加油の焼付き限界荷重は,コーン油>大豆油>なたね油>タービン油となる.一方,DBPo添加油では,なたね油>コーン油>大豆油>タービン油となる.また,添加剤の種類に関しては,DBPoの場合がDBDSの場合に比べて耐焼付き性能の改善に効果的であることが明らかになった.
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