研究概要 |
本年度は,植物系生分解性潤滑油を動力伝達用歯車装置に適用することを目的とし,リン系の代表的な耐摩耗添加剤である,DBPo(ホスホン酸ジブチル)を添加した植物油(大豆油,なたね油,コーン油)の耐スコーリング性能について,動力循環式歯車試験機を用いて検討した.さらに,植物油とタービン油の耐スコーリング性能について比較・検討した結果,以下のことが明らかになった. 1.歯車の本体温度は,各植物油にDBPoを添加することにより約1〜2℃低く現れており,DBPo添加剤による摩擦特性の改善効果が認められる. 2.無添加(DBPoを添加しない場合)の各潤滑油の耐スコーリング性能は,なたね油>コーン油>大豆油>タービン油の順序となり,なたね油の耐スコーリング性能はタービン油の約1.7倍となる. 3.DBPoを添加した植物油の耐スコーリング性能は,試験機の負荷容量を超過し,設定した荷重段階内でスコーリングが発生しなかったため,スコーリングに対する最終的な限界荷重を評価できない.しかしながら,DBPoの添加により,なたね油の耐スコーリング性能(単位歯幅当たりの歯面垂直荷重)は78N/mm以上,コーン油の場合は378N/mm以上,大豆油の場合は449N/mm以上,それぞれ増加した. 4.タービン油に対するスコーリング臨界温度は約280℃であるが,無添加のなたね油に対するスコーリング臨界温度は約400℃となり,植物油のうち最も高い.また,DBPoを添加した植物油のスコーリング臨界温度は,各植物油とも400℃以上となる. 5.各植物油の場合の音圧レベルおよび振動加速度は,タービン油の場合に比べて低い.
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