本年度では、樹木の流体力学的特性として、後流の速度分布と抗力係数の測定を行った。まず後流の速度分布測定において、主流速度を自然風と同程度の10m/sに設定し、樹木の最大枝張幅の数倍下流で平均速度分布と乱れ強さ分布を測定した。その結果、樹木後流においても、一般的な二次元物体の後流と同様、放物型の平均速度分布が得られた。乱れ強さの分布については、2つの乱れ強さの極大値(ダブルピーク)が観察された。このダブルピークを与える流れの構造を確かめるため、速度変動の時系列データにFFT解析を行ったところ、約20Hzの卓越周波数が確認された。このことから、樹木の後流において、円柱・角柱の後流と同じ、大規模渦の周期的な放出が行われている可能性があることがわかった。また、渦の巻き上がり位置は、円柱の場合よりも下流であることがわかった。 抗力係数の測定に関しては、6軸センサーを用いて、主流速度5〜15m/sの範囲での抗力の直接測定を行った。その結果、主流速度が増加するにつれて、抗力係数が減少するという傾向が明らかになった。その程度は、主流速度12m/sでは、抗力係数が0.8〜0.9であり、円柱の抗力係数よりも小さいという結果が得られた。抗力が減少した要因として、樹木の幹のしなりと枝葉の透過性が考えられる。このうち、枝葉による透過性が抗力減少に及ぼす影響を評価するため、枝葉を適当に剪定し、抗力係数の定義上の投影面積を一定にしたまま、透過率を大きくした測定試験を行った。画像処理により剪定後の正味の投影面積を算出し、もとの投影面積に対する減少割合を求めたところ、抗力の減少割合に一致した結果が得られた。このことから、四季の変化や種類の違いにより枝葉の密度が異なる場合においても、画像処理によって正味の投影面積を求めることにより、樹木の抗力係数を推定できる可能性を示した。
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