研究概要 |
本年度では,大気圧下の低濃度環境汚染物質の浄化に向けて,イオンやラジカル,オゾン,一酸化窒素,一酸化炭素が混在した高反応流動場を詳細に解明するため,超低濃度の揮発性有機化合物(VOC)の安定供給が可能な環境汚染物質浄化反応炉を作製した.本反応炉は,誘電体バリア放電を利用し,ガス流速や印加電圧条件を変えることでストリーマの発生を自在に制御できる構造を有する.さらに,高反応性ガス種であるO,NやOHをリアルタイムで特定する高感度モノクロメータやガス濃度計測器を導入し,低濃度の環境汚染物質の分解プロセスの解明を行った.具体的には,作動ガスの種類,印加電圧,電圧印加周波数,電圧印加波形,VOC注入位置,VOC濃度などを変化させ,オゾン発生濃度やメタノール等のVOC分解率等の分解特性を明らかにした.これによりラジカルが,メタノール分解における重要因子であることが示された.得られた結果を以下にまとめる. (1)O原子の発生量と密接な関係のあるオゾン濃度は,電力が同じ場合印加電圧を上昇させる方が周波数の増加より効果が大きい.このとき放電部の紫外線分光によりO,OH,Nの励起原子やN_2(B^3Π_g),N_2(A^3Σ_u^+),NOなどが生成されていることを確認した. (2)作動ガスに水蒸気を2mg/l混入している合成空気を使用した場合,50ppmのメタノールは100Hz,エタノールは200Hz,スチレンは40Hzで完全分解された.水蒸気を6mg/lにした場合では,メタノールを分解するために必要な電圧印加周波数や印加電圧は大きくなった.なお,純窒素とした場合,いずれも全く分解されなかった. (3)メタノール注入位置を放電部上流,放電部下流100mm,放電部下流9m(7秒後)と変えた場合,いずれにおいても完全分解した.
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