研究概要 |
本年度は,主として,次の3つのテーマに取り組んだ. 1.申請者は,本研究の計画調書提出後,蒸気・蒸気2成分系において,さらに新しい「新気体論効果」を発見した.そこで,本年度は空間1次元の簡単な境界値問題を例に取りあげ,その数値解析によって新たに発見した「新気体論効果」のメカニズムの解明に取り組んだ.その成果をまとめた論文をPhysics of Fluids誌に投稿した.同論文はすでに掲載が決まっている. 2.重力場の影響下における「新気体論効果」の研究への準備として,低希薄度における2重拡散対流の研究に着手した.解析は、モデルボルツマン方程式を用いた標準的な差分法により行った.本年度は,実際に成層状態の解が不安定となり,渦流の解へと遷移する物理的状況が存在することを確認した.現在,渦流の解がより安定となる物理的状態を確定する数値計算を推進している. 3.「新気体論効果」を記述する流体力学的な方程式系の汎用的な数値解析コードの開発を最終的な目的として,まず,定常問題に対して確立した方程式系の非定常問題への拡張をおこなった. なお,本研究の主題である「新気体論効果」は,凝縮相の界面で蒸発や凝縮を伴う蒸気の流れにおいて特に重要となる.そこで,凝縮相界面で起こる物理現象を分子レベルで解明する研究を近年精力的に進めているイタリア・ミラノ工科大学Aldo Frezzotti教授を招聘し,気体分子運動論の分野で標準的に使われている凝縮相界面での境界条件について,その問題点および新しいモデル化の可能性について議論した.
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