研究概要 |
前年度の成果を踏まえ,本年度は,主に次のテーマに取り組んだ. 1.蒸気・蒸気2成分系で新たに発見した新気体論効果の研究をさらに展開した.まず,蒸発・凝縮を伴う2平板間において,新気体論効果の概念により初めて理解可能な移流・拡散型の解が,オイラー型の2つの解の分枝を接続していることを見出し,これを立証するための漸近解析を行うとともに数値的にもこの理論の妥当性を検証した.この成果は2004年7月にイタリア国モノポリ市で開催された第24回国際希薄気体力学会議ならびに11月に台湾,台北市で開催された非線形解析と応用数学に関する日台合同会議において発表した.今年度はこれをモデル方程式に対して行ったが,現在,ボルツマン方程式の場合への一般化を準備中である. 2.蒸気・蒸気2成分系で新たに見つかった新気体論効果では,いわゆる通常の気体論効果である壁面での物理量の「跳び」が本質的である.そこで,古典的ではあるが新たな重要性を担うにいたった.蒸発・凝縮が起こる界面における温度や圧力のとびについての,線形ボルツマン方程式の半無限境界値問題の解析を行い,混合気体に対するボルツマン方程式の標準解となるべき精確な解を求めた.この成果はすでにPhysics of Fluids誌に掲載が決まっている. 3.前年度に引き続き,重力場内でおこると予想される,2成分混合気体系の成層状態の不安定化について計算を進めている.現在までに,不安定化により対流渦が発生することを確認しているが,現在は,それが発生するパラメータ領域の確定作業を行っている. 4.「新気体論効果」を記述する流体力学的な方程式の一つの数値解法として,気体分子運動論と理論的親和性の高い気体論スキームの開発に着手した.
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