研究概要 |
圧縮性乱流における音波の受容性、放出性研究の第一段階として、乱流中の渦構造と音波の関係を調べた。研究の主な手段は一様等方圧縮性乱流の直接数値計算と、渦の同定・可視化手法[1,2]である。数値計算の格子点数は256^3-1024^3、乱流マッハ数は0.4-0.01、テイラー長尺度によるレイノルズ数は60程度である。 減衰性一様等方圧縮性乱流のシミュレーションにおいて、管状渦構造は非圧縮性乱流の場合と非常に似通った時間発展を遂げる。しかし、管状渦構造の旋回中心軸上の渦度および渦伸張の分布を見ると、非圧縮性乱流には見られない微細な振動が発生していることがわかる。この振動の特徴を調べたところ、その波長はほぼ渦芯の直径程度であることなどがわかった。他方、渦音の発生源もまた渦中心軸付近に局在化していることから、この圧縮性乱流特有の振動は音波に非常に密接に関連している。さらに、速度場のヘルムホルツ分解により、この振動が音波そのものではないことが示される。また、渦軸上の波動の分散関係を調べると、その角振動数は音波よりも非常に遅い。以上の解析から、渦軸上に観測される振動は渦波であり、これが音波と連成的に成長しているものと結論付けられる。このような渦波の存在は、同じ振動数をもつ音波を外部から入射させた場合に共鳴するなどの相互作用が期待され、乱流の音波受容性についての重要な知見となった。この成果は国際会議Turbulence and Shear Flow Phenomena (TSFP-3,June 2003,Sendai)において口頭発表の後、J.Turbulence誌(Online Journa)に掲載された[3]。 [1]H.Miura and S.Kida, J.Phys.Soc.Japan 66(1997)1331. [2]S.Kida and H.Miura, J.Phys.Soc.Japan 67(1998)471. [3]H.Miura, J.Turbulence 5(2004)10.
|