流体の圧縮性、特に音波が乱流渦に及ぼす影響を調べてきた。昨年度までの一様等方圧縮性乱流の数値シミュレーションに加え、今年度はケルビン・ヘルムホルツ不安定性を伴う混合性乱流の研究に着手した。圧縮性の影響を調べるための参照対象として非圧縮性流体の混合性乱流も行い、これとの対比で音波の放出性、圧縮性の影響などを調べた。 圧縮性の混合乱流、一様せん断乱流では、レイノルズ応力項による運動エネルギーの生成低下や、圧力・速度発散相関項の働きなどが圧縮性による乱流揺動成長の低減の原因として挙げられている。本研究の主たる課題はこのような圧縮性の影響における渦構造の影響であり、これまでの一様等方乱流に見られたような、圧縮性の影響を受けた渦波の発生などに注目している。 混合性乱流の解析の第一段階として、まず非圧縮性乱流のレイノルズ応力項によるエネルギー伝達機構を詳細に解析した。この解析には荒木(岡山理科大学)が開発した非発散性正規直交ウェーブレットを利用した。このウェーブレットは非発散性ベクトル場を構成するため、非圧縮性の速度場の解析に向いている。また、圧縮性成分の分離は、ヘルムホルツ分解によって用意に実現できるのが特長である。これまでの解析から、混合渦の発生に先立って、渦構造の成長を示唆するエネルギー伝達が発見されている。これらの結果については、第19回数値流体力学シンポジウムにおいて、荒木(前出)及び三浦の連名で発表した。現在、マッハ数0.2から1.0程度までの亜音速・遷音速領域における混合層シミュレーションを終えたところである。昨年度までに発見した音響的な渦波の発生機構がこのような混合乱流においてどのような役割を果たすか、特に圧縮性による乱流発達の抑制との関連について集中的に調べている段階であり、その成果は今後の国際会議等で発表の見通しである。
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