火災旋風及び火災消火時の熱遮断に対するふく射・対流複合伝熱の数値解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15760122
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 酒井 清吾 東北大学, 流体科学研究所, 助手 (70323110)
• キーワード: ふく射 / 対流 / 複合伝熱 / ミスト / ガスモデル / 非等方散乱

研究概要

火災旋風は、火災現場に旋回流の流れ場が発生することで生じる複雑な熱流動場で、通常の火災よりも甚大な被害をもたらす。また、熱遮断は、工業的災害や火災、素材加工用の火炉の設計、更にはロケットの再突入などを考える上で重要である。火災が発生した場合、周囲の構造物が非常に強いふく射に曝されるため、熱遮断に効果のあるもので表面を覆う。さまざまな熱遮断に関する方法の中でも、水の噴霧は火災などから物を守るためによく行われている。したがって、火災旋風や火災の消火に対して、分光学的特性を考慮に入れたふく射伝熱と流動場を統一的に取り扱う解析を行うことは、火災の広がりを抑え、熱遮断を効率的に行う上で非常に有効である。
そこで研究初年度は、火災旋風及び火災消火時の熱遮断に対して、まず、火災旋風の誘因となる旋回流に関する研究を行った。当初は実験装置を構築して、旋回渦周囲の流れ場の可視化実験を行う予定であったが、研究の最終目標である数値解析に着眼点を移した。流れ場の数値解析モデルを構築し、市販の汎用解析コード上で数値解析を行うことができ、今後、流れ場を代表するマクロパラメータを変化させた数値解析を行うベースを確立できた。
次に、分散媒体及びふく射性ガスの波長依存性を考慮したふく射伝熱解析の高速化に関する研究を行った。分散媒体が分布する場合の分光学的特性のデータベースを数値解析により構築した。また、固体面間のふく射熱交換の高速化に関して、形態係数の近似導出法を開発した。これらの手法を用いて、ふく射-対流複合伝熱場の数値解析を行い、ふく射性媒体の一つである水蒸気の含有量が、自然対流場に与える影響を評価し、適度の水蒸気含有量で自然対流が抑制されることがわかった。
以上より、今年度の研究成果は、当初の計画から変更した部分があったが、2年にわたる研究の初年度として十分な成果が得られた。

研究成果

• [文献書誌] M.Khoukhi, S.Maruyama, S.Sakai, M.Behnia: "Combined non-gray radiative and conductive heat transfer in solar collector glass cover"Solar Energy. Vol.75. 285-293 (2003)
• [文献書誌] S.Sakai, S.Maruyama: "A Fast Approximated Method of Radiative Exchange for Combined Heat Transfer Simulation"Numerical Heat Transfer Part B : Fundamentals. Vol.44, No.5. 473-487 (2003)
• [文献書誌] S.Maruyama, Y.Mori, C.Chikira, S.Sakai: "Combined Nongray Radiative and Conductive Heat Transfer in Multiple Glazing Taking into Account Specular Reflection and Absorption"Heat Transfer - Asian Research. Vol.32, No.8. 712-726 (2003)
• [文献書誌] S.Maruyama, Y.Mori, S.Sakai: "Nongray radiative heat transfer analysis in the anisotropic scattering fog layer subjected to solar irradiation"Journal of Quantitative Spectroscopy and Radiative Transfer. Vol.83. 361-375 (2004)
• [文献書誌] S.Sakai, S.Maruyama: "Reduction of Computational Time in Radiative Exchange between Arbitrary Three-Dimensioanl Bodies"4th CERC(Combustion Engineering Research Center) Workshop, Abstract Book, Jeju, Korea. 12 (2003)
• [文献書誌] M.Khoukhi, S.Maruyama, S.Sakai, M.Behnia: "Nongray Radiative and Conductive Heat Transfer Analysis of an Absorbing-Emitting Solar Water Collector Glazing"第40回日本伝熱シンポジウム講演論文集,広島. Vol.III. 767-768 (2003)
• [文献書誌] M.Khoukhi, S.Maruyama, S.Sakai: "A Simple Method for Determining the Optical Constants of a Clear Glass Window Using Fourier Transform Infrared Spectrophotometer"第24回日本熱物性シンポジウム講演論文集,岡山. 189-191 (2003)
• [文献書誌] 酒井清吾, 円山重直: "ミスト雰囲気中のふく射-対流複合伝熱の数値解析"第41回日本伝熱シンポジウム講演論文集,富山. (印刷中). (2004)