研究概要 |
水への動的な外乱の付与は、過冷却水の凝固に最も効果的な方法の一つである。本研究では、微弱な電場を付与することによって、過冷却水を凝固させ、その効果・メカニズムについて検討することを目的としている。本年度は、試料容器内に設置した過冷却水に電場を付与し、凝固に与える影響を観察・分析した。装置は温度制御・測定系、氷核発生箇所の観察系および電場付与系の3つに区分される。温度制御・測定系では、試料の温度を高精度に制御・測定する。氷核発生箇所の観察系では、凝固の瞬間映像をビデオカメラで記録する。電場付与系では、過冷却水に挿入した電極によって、電場を付与する。この際、銅電極は、高い解消能力を持つものの、腐食による消耗が激しく、繰り返しの使用に適していない。一方、炭素電極は耐久性が高いものの、解消効果が低い。そこで、両方の電極材質の利点を生かし、炭素に銅メッキを施した電極を製作し、電場付与を試みた。メッキした銅が腐食した場合、再度メッキを施せば繰り返しの使用が可能である。電場付与実験は、複数の試料について行い、凝固効果について分析した。また、電場を付与しないで冷却し、自然解消させる実験も行い、電場付与による効果との比較検討も行った。その結果、自然解消よりも効果はあるものの、銅電極だけの解消効果よりも低い効果であることが分かった.撮影した画像を分析した結果、陽極から電気分解により溶解した銅イオンが陰極で還元され,陰極より銅デンドライトを形成しながら短絡することが分かった.その際,還元された金属粒子の電極への衝突によって解消し、銅電極と同様の解消が行われなかったと考えられる。来年度は、デンドライトが生じないような方法で実験を行うと共に、得られた結果から凝固メカニズムについて検討する予定である。
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