研究概要 |
液相内の蒸気相界面に空間的に曲率差が存在すると,表面張力の効果により,蒸気相重心の移動や蒸気相内部での蒸気の輸送が生じる.この気泡ポンプ効果を熱輸送デバイスへ応用するため,本研究では,微小流路(マイクロチャンネル)群がより大きな流路へつながる構造を持つループヒートパイプを試作し,その特性を調べる. 本年度は,D-RIEや陽極接合といった微細加工技術を用い,シリコン基盤へ幅50umのマイクロチャンネル列と幅500umのチャンネルを備えたループ流路を形成し,ガラスプレートを接合し,プレート型ループヒートパイプを試作し,冷媒の流動特性および熱輸送特性を調べた.水を冷媒とした場合,僅かな冷媒の循環とその循環による熱輸送を確認したが,マイクロチャンネルにおける流動抵抗が非常に大きく実用的ではないという結論となった.エタノールを冷媒とした場合,水よりは活発は循環が観察され,冷媒の循環による熱輸送は,基盤熱伝導の約60%程度であった. さらに,流動抵抗を低減したヒートパイプを試作するため,厚さ200umのSUSプレートにレーザー貫通加工により形成した最小幅250umのループ流路を形成し,上下よりSUSとアクリル製フランジでプレートを挟み込んだループヒートパイプを製作した.結果として,エタノールを冷媒とし,プレートを積層し流路厚さ400umとした場合,活発な冷媒の循環を確認し,水平設置において等価熱伝導率400W/mK,縦設置において940W/mKを記録した.また,水を冷媒とするとSUSプレートの濡れ性の低さから,キャピラリー効果による冷媒の循環は不十分な結果であった. 今後,試作ループヒートパイプの熱輸送特性を,冷媒の種類,流路の水力直径,流路パターンに対して調べ,気泡ポンプ構造を内蔵する熱輸送デバイスの実用化の可能性を明らかにする.
|