研究概要 |
光学測定が可能な衝撃波管を用い、励起レーザー波長266nmでの純粋ピレン蒸気の高温・高圧下における分光スペクトルデータを計測した.衝撃波通過後の圧力1.2MPaで温度を800K〜1200Kと変化させてスペクトルを計測し,衝撃波通過前(0.1〜0.3MPa,423K)と蛍光強度,蛍光スペクトル形状を比較した.その結果,温度が高くなると蛍光強度が大幅に減少することがわかった.蛍光スペクトル形状は温度が高くなるとブロードになり,特にスペクトルの長波長側が広がることがわかった.また,温度の上昇に伴い異なる振動バンドに対応する蛍光スペクトルの構造が不明瞭になることがわかった.今回の実験で測定された蛍光スペクトルの位置や形状は,過去に報告されている文献値などとおおむね一致した. 次にピレンを溶解する前の試験燃料(0号ソルベント)を用い、励起レーザー波長266nmでの非定常噴霧火炎のLIFスペクトル及びLIF画像の計測を行った。実験の結果、過去に行った励起波長355nmの場合の発光画像に比べて、266nmの励起波長を用いた場合には噴霧火炎内のレーザーシート入射側にのみ強い発光領域が観察された。これは、266nmの励起波長では、励起波長355nmの場合に比べてより多くの物質による吸収・発光が生じていることを示唆している。また着火後においては、噴口から35mm〜55mm下流でPAHのLIFと考えられる400〜500nmの波長域になだらかなピークを持つスペクトルが計測された。噴口から下流に行くに従い、このPAHのLIFと考えられるスペクトルはすす粒子のLIIと考えられる黒体輻射スペクトルに変化した。今後、これらのバックグラウンド光と溶解ピレンからの蛍光との干渉について検討した上で、噴霧火炎中のピレンの分光計測及び温度分布計測を試みる予定である。
|