ディーゼルエンジンは高い熱効率を持っているが、NOx、CO、HCとすすなどの粒子状物質(PMと略される)が有害成分として、ガソリンエンジンよりも多く排出されるという問題がある。PMはフィルター(ディーゼルパーティキュレートフィルター、DPF)を用いることで吸着・除去することが可能であるが、その大きさが数ミクロンからサブミクロンオーダにわたるため、効率的にPMを捕集することは容易ではない。また吸着した粒子を焼却するフィルターの再生過程が必要であるが、その最適化はできていない。現状では、多孔質のセラミックでできたDPF内のガス流動・反応を直接解析する方法がなく、主に試作したDPFに排気ガスを通してその特性を収集することで製品の開発が行われてきた。しかし試作品を作って試行錯誤により現象を分析し、製品の設計を行うことは効率的ではない。DPF内の排気ガスの流れと微粒子の吸着・燃焼過程が模擬できれば、より詳細な現象の理解ができ、また効率のよいフィルター開発も可能となる。 本研究では、これまで数値的に解析が不可能であったDPF内の流れと燃焼反応を模擬する方法を提案する。解析手法には格子ボルツマン法を用いる。この方法は従来の解析方法とは異なり、現象をよりミクロな視点からモデル化している。そのため境界条件の設定が容易であり、複雑な境界面を持つ多孔質フィルター内の流れを解析するのに適している。ここではまずその第一段階として、多孔質壁を簡略化したモデルを用いて複雑な流れを伴う燃焼場を解析した。具体的には、流路に障害物をランダムに配置し、その物体表面で流速がゼロとなる境界条件を用いることで多孔質壁を模擬した。このとき、物体の大きさと個数を変えて透過度を変化させた。その結果、得られた流れは理論と非常に近い関係が得られた。また物体表面に吸着したすすの燃焼が計算され、フィルターの再生過程が模擬できた。
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