気流乾燥を行う際、乾燥後の排気を循環して利用することにより、排気の無い、熱効率の高い乾燥が可能となる。しかし、気流湿度が高くなるため、低温の被乾燥物を乾燥熱風である過熱水蒸気あるいは高湿度気流中に投入すると、初期に水蒸気が凝縮(結露)し、その後、凝縮水が再び蒸発する特有の変化過程を経る。 本研究では、過熱水蒸気中での同変化過程モデルを高湿度空気に拡張するため、高湿度気流中での凝縮(結露)、蒸発の一連の過程ならびにその効果を実験的・理論的に検討することとした。昨年までに、過熱水蒸気中での反転過程とその特性値ついて、凝縮が終了する時間と、凝縮した水がすべて蒸発して被乾燥物の初期水分量が元に戻るまでの時間の比が、一般に4倍となることを示してきたが、高湿度空気中では、初年度までの研究により、湿度によってその比は変化すること、反転過程のモデル化には被乾燥物の初期温度と気流の露点温度、気流温度に加えて、湿球温度が重要なパラメータとなることを示し、旧来の反転過程モデルを高湿度空気に拡張したモデルを提案した。 さらに本年度は、被乾燥物として、塗料などに含まれることの多い低沸点物質(エタノール水溶液)を用いた場合の反転過程について調べるため、気液界面近傍の温度を25μmの極細熱電対を用いた詳細な測定により、水蒸気・エタノールのそれぞれの物質流束を求めた。その結果、初期のエタノール濃度が高いほど、初期の水蒸気凝縮速度は遅く徐々に増加していくのに対し、濃度が低いと、逆に初期の水蒸気凝縮速度は速いが、時間とともに減少することがわかった。また、濃度変化の推算結果と実験結果は良く一致し、さらに、エタノール・水系は共沸点を有することから、その平衡状態に達するまで水蒸気凝縮が続くことを示した。また、反転過程が実際の食品加工時の被乾燥物に与える影響について、アマランス種子のポッピング加工実験結果から論じた。
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