本研究では各種要素部品の完成を受け、広い温度ならびに圧力範囲におけるPρTx性質の精密測定が可能な装置の本格的な製作・組み立て作業を昨年3月より開始した。6月には、本研究の目的とこれまで得られた知見をアメリカ熱物性シンポジウムにおいて発表した。恒温槽ならびに配管などの大まかな部分を作成した後は、装置の耐圧試験(〜200MPa)および耐熱試験(〜440K)を含めた一連の性能試験やデータ解析プログラムなどの整備を行い、さらに広い温度ならびに圧力範囲における計80点の差圧検定データに加え、高純度の純水を用いた精密な内容積検定結果に基づいて、信頼性の高い差圧および内容積の校正式を準備した。 一連の製作・検定作業が昨年11月に終了した後に、飽和蒸気圧力の精密測定を開始した。飽和蒸気圧力実測値には、試料内の不純物に加え、計測・制御等の問題に起因する影響が顕著に現れる。そのため本研究では、昨年12月から今年1月にかけて、温度範囲310K〜407Kにおけるイソブタンの飽和蒸気圧力測定を精力的に実施し、計204点の実測値を得ることができた。特に、同一温度における計測値は各温度において±0.2kPa以内のばらつきで良好に一致しており、本測定装置の高い再現性が明らかとなった。これに加え、本実測値が既往の熱力学モデルおよび他の測定者による信頼性の高い実測値情報と良好に一致することを確認した。 本実測値については、アメリカのJournal of Chemical Thermodynamics誌に論文を投稿すべく準備中である。また現時点において、ベローズ内容積の変化の温度ならびに圧力依存についてのより詳細な検定試験を実施中であり、一連の検定結果から内容積検定式をリニューアルし次第、イソブタンのPρT性質を測定し、その後直ちに、プロパンおよびプロパン/イソブタン系混合流体に関する測定に移る予定である。
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