昨年度に設計・試作した積層圧電アクチュエータ(MPA)を用いたドラム型圧電ブレーキの改良を行った。前回試作したブレーキはMPAを数多く使用するため、静電容量が非常に大きく、大きな突入電流が流れた。したがって、駆動回路の電流容量を大きくする必要があり、消費電力、応答性、回路の小型化に関して問題点があった。今年度はこれらの問題点を解決すべく、基本構成の再検討も含めて、性能向上を試みた。設計は前年度購入したパーソナルコンピュータにより有限要素法を用いて行った。変更点を以下に述べる。 以前のブレーキではMPAを8個使用していたが、1個のMPAと変位拡大機構からなるブレーキアクチュエータ(BA)の構成を考案した。変位拡大機構はSUS製の弾性梁の作用点変位をてこの原理を用いて拡大するシンプルな構造である。弾性梁の片端にMPAを配置し、MPAの伸び変位によって、先端にブレーキシューが接着された他端を大きく変位させる。弾性梁の他端を予めバネによりホイールに予圧し、MPAに電界を加えるとホイールとブレーキシューが分離して、ブレーキを解除する構成である。荷重と変位の関係を計算し、梁の長さ、予圧の位置等を決定した。変位拡大機構は計算どおりに動作したが、ブレーキトルクは僅かにしか変化しなかった。有限要素法解析により、弾性梁の曲げ変位によりブレーキシュー表面に回転変位が発生し、ホイールと分離しない部分があることが、ブレーキトルクが変化しない原因と判明した。しかし、実証にはまだ至っていない。 また、購入したACサーボモータと超音波モータのダイナミックスを考慮し、連動・制御させる場合の制御要素の同定を試みたが未だ完了していない。ブレーキおよびクラッチに要求される性能を理論上において洗い出し、理想時において、購入したDSPにより制御可能であるかの理論的検証を行った。未だ検討中である。
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