研究概要 |
本研究では,圧電フィルムを用いた薄膜状ダンパ,すなわち任意の曲率を有する薄肉構造物の表面にシール状に貼付して外部の駆動回路に接続すれば,構造物の境界条件やフィルムのサイズ・貼付位置にかかわらず何らかの振動抑制効果を発揮するような,いわば「スマートダンパ」の開発を目的とし,その具現化の方法として,積層化した圧電フィルムの表裏にマトリックス状の電極パターンを形成させ,外部の回路で駆動させる方法を提案し,スマートダンパとしてのメカニズムの設計手法について検討し,その有効性を数値解析および実験によって検証することを方針としている.本年度は,圧電フィルムの表面に電極パターンを形成させてセンサ/アクチュエータとして使用するための基礎実験を目的とし,当該センサ/アクチュエータを作成して実際に平板構造物に貼付し,振動分布センサおよびアクチュエータとしての特性をそれぞれ数値解析および予備的実験によって検討した.まず,表裏全面にアルミニウム電極が蒸着された圧電フィルムを用い,その電極の一部を溶剤を用いて剥離させることによって,フィルム表面上に数極の電極を形成させた.次に,厚さ0.5mm,幅240mm,長さ300mmのアルミニウムの平板の一表面に上記で製作した圧電フィルムを貼付した.まず,センサとしての特性を検証するために,平板の一点を衝撃し,各電極からの出力電圧信号の時刻歴応答および平板の観測点変位の時刻歴応答を測定し,理論解析結果と比較・検討した.次いで,アクチュエータとしての特性を検証するために,各電極に正弦波電圧を同時に入力した場合の平板の周波数応答を変位センサにより計測し,理論解析結果と比較・検討した.以上の結果,圧電フィルム上に複数の電極パターンを形成させ,これを振動制御のためのセンサおよびアクチュエータとして利用可能であることが基礎的段階において確認できた.
|