研究概要 |
本研究では,圧電フィルムを用いた薄膜状ダンパ,すなわち任意の曲率を有する薄肉構造物の表面にシール状に貼付して外部の駆動回路に接続すれば,構造物の境界条件やフィルムのサイズ・貼付位置にかかわらず何らかの振動抑制効果を発揮するような,いわば「スマートダンパ」の開発を目的とし,その具現化の方法として,積層化した圧電フィルムの表裏にマトリックス状の電極パターンを形成させ,外部の回路で駆動させる方法を提案し,スマートダンパとしてのメカニズムの設計手法について検討し,その有効性を数値解析および実験によって検証することを方針としている.平成16年度は,平成15年度の理論解析結果および予備実験結果を基礎として実際に薄膜状ダンパによる平板のアクティブ制振を試みることを目的とした.まず,前年度の結果をもとに,スマートダンパの平板への適用を考え,マトリックス状に電極を形成させた2層あるいは4層の積層型圧電フィルムを作製した.ここでフィルム2層ずつをそれぞれ1枚のセンサ/アクチュエータとして用いる電磁シールド構造とした.次に,前年度に作製した厚さ0.5mm,幅240mm,長さ300mmのアルミニウムの平板の一表面に上記で製作した圧電フィルムを貼付し,この平板の一点に衝撃入力が加わる場合の減衰自由振動制御を行った.ここで,マトリックス状の電極生成方法としては,前年度と同じく全面にアルミニウム電極が蒸着された圧電フィルムを用い,その電極の一部を溶剤を用いて剥離させることによって,フィルム表面上に数極の電極を形成させた.また,本手法においては数個の制御回路を同時・並行的に実装する必要があるが,そのための手立てとして動的書き替え可能なFPAAチップを用い,希少のICによって複数のアナログ制御回路が実現できる可能性を確認できた.
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