研究概要 |
生体の手指に現れる振るえ(振戦)を抑制するために,ばねと質量で構成される動吸振器を製作し,受動的制御手法による制振効果について検討を行った.生理的振戦に関する過去の研究によれば,緊張時における震えの周波数は個人によらずほぼ9Hz前後であることが報告されているため,その固有振動数が9Hzになるように製作し,個人差によるずれを調整可能とするためばね定数をねじで可変とする機構を設けた.動吸振器の寸法は作業性を損なわないように極力小さく作成し,質量は約40g,縦20mm×横17mm×高さ16mmのブロック形状とした. 振戦の制御実験にあたり,被験者の姿勢としては肘を水平に伸ばした状態に保ち,地面に対して水平方向の振動を計測することとした.また,擬似的に震えの状態を再現するために,被験者の腕に偏心質量を取り付けたモーターを装着し,強制的に9Hz付近で振動させた.制振実験を行う際に,動吸振器を装着する部位は手首上部とし,手首周囲にバンドで固定した.制振効果の確認には,動吸振器と同質量の重りを装着した場合の条件を比較対象とした.制振効果の評価方法としては,加速度計を人差し指先端に取り付け,水平方向の加速度の大きさを一定時間計測するとともに,紙上に描かれた直径12Ommの実線円周上を被験者がペンでなぞり,基準線からのずれ量で評価を行った. 以上述べた方法で行った実験より,人差し指先端で検出された加速度についてはそのレベルが1/5程度まで低減されること,および基準線をなぞる試験については明らかに動吸振器非装着時と比較して筆跡に見られる細かい振動的波形が除去されていることが確認でき,本装置により有効に振戦が抑制されることがわかった. 今後は本年度に引き続き動吸振器質量の適正値に関する検討,および振動除去の水平・垂直方向への対応について考え,さらに能動的に振戦を制御する方法について検討する予定である.
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