フォルソンダムで発生した巨大なテンタゲート崩壊事故に関して、これまでに、小形のモデルゲートを用いた実験を行ってきた。しかしながら、モデルゲートが小形であるために、発生する摩擦の影響をどうしても無視することができなかった.本研究課題では、系の非線形効果(弾性支持系および波動)のために、定常振幅に落ち着いた場合の振動現象の評価を試みることを目的としているが、その前段階として可能な限り流体による摩擦の効果を低減させることができないかと考え、水槽ではなく、風洞を用いてゲートの引起す自励振動現象を再現する可能性を検討した.実験には、京都大学桂キャンパス・インテックセンター・システムシミュレーションラボ内に設置された小型の吸い込み式風洞を使用した. 自励振動実験による振動特性の計測 テンタゲートの小形モデルを用いて、2自由度での自励振動実験を行った。スキンプレート単体の固有振動数がゲート全体のトラニオンピン周り固有振動数よりも高い場合には、ゲート全体のトラニオンピン回り振動が主体の自励振動が発生し、スキンプレート単体の固有振動数がゲート全体のトラニオンピン周り固有振動数よりも低い場合には、スキンプレートの流水方向の低次の曲げ振動が主体となる自励振動が発生した。スキンプレートの流水方向振動が主体で起こる自励振動は、水を用いた実験では確認できていなかったものであり、今回の実験によって得られた貴重な結果である. 強制加振実験による圧力測定 ゲートのトラニオンピンまわり振動とスキンプレートの流水方向振動についてそれぞれ1自由度の強制加振を行い、振動時にスキンプレートの上流側および下流側に生じる圧力を計測した。今回、圧力の測定はスキンプレートの円弧に沿った6点でしか行っていないため、非定常空気力を求めることはできなかったが、圧力の分布特性を調べることができた。生じる圧力の絶対値は小さいが、圧力の分布や振動に対する圧力の位相遅れは、水を用いてこれまでに計測したのとほぼ同じであることが確認できた。
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