研究概要 |
本研究は,織物複合材料などのいわゆるテキスタイル複合材料に形状記憶合金(TiNi)細線を機能繊維として加え,複合材料にセンシング機能とアクチュエーション機能を与えることにより,外界からの負荷や自らの損傷をトリガーとして自律的に形状や特性を変化する機能複合材料システムを創成することを目的としている.その際,あらかじめ形状記憶合金を織り込んだ機能性プリフォームを作成し,それを他の層と共に積層するというアプローチによって,機能設計の自由度を高めると同時に材料構造の単純化を図る.本年度は,(1)形状記憶合金繊維をひずみセンサとして用いるための基礎検討;(2)形状記憶合金繊維の平織物への加工とそれを用いた複合板の試作;を中心に研究を行った.(1)については既にいくつかの研究例が報告されているが,ここではその追試を行い形状記臆合金繊維のセンサとしての利用に一定の目処を得た.(2)ではまず,常温マルテンサイトの形状記憶合金ワイヤ(線径0.2mm)を用いて縦横2mm間隔の平織構造を形成し,これをエポキシ樹脂層,カーボン織物と共に積層して板厚2mmの積層板を作成した.これを固定用ジグに取り付けた後120℃まで加熱して炉から取り出し,加速度センサを取り付けてインパクト加振法により1次の固有振動数を調べた.供試体の表面温度が室温に戻るまで固有振動数の測定を繰り返し,固有振動数の温度依存性を整理した結果,形状記憶合金の相変態による板の剛性変化を認めることができた.ただし剛性の変化量は十分ではなく,形状記憶合金の体積分率が低すぎたこと,余ひずみ制御が十分でなかったことが課題として挙げられた.その他関連する研究として,提案する複合材料のモデル化の際に必要な形状記憶合金ワイヤの非線形変形解析を行う有限要素法コードの開発,梁や平板など曲げ変形を受ける構造物の損傷モニタリング手法の開発を行った.
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