研究概要 |
本研究では,実際に運転されている機械から比較的簡単に測定される加速度信号を用いた振動診断において,常に問題となるノイズの影響を排除し,高い感度を保ちつつターゲットに対する測定位置の自由度を確保するという高い目標を設定している.これに対し,下記1.の振動診断手法を提案した. 1.亀裂など異常が発生する場所を挟む二点の加速度応答を記録し,それによる二次元頻度分布を作成.二次元ウェーブレット変換を適用してパターンを分類し,異常診断に供する. これに加え,定常振動に限定した下記の手法2.も新たに提案し,より簡便な診断・同定を実現する. 2.機械の通常の運転状態を想定した定常応答の加速度信号に対し,信号の定常性を利用したノイズ除去法を提案.1次元ウェーブレット変換を用いて振動診断を行う. それぞれの手法に対する本年度の研究実施結果は以下の通りである. 手法1.多くの実験によるマザーデータの収集 ・予め小さな傷をつけた疲労破壊試験片におもりを取り付けて定常的に振動させ,疲労破壊に至るまでのデータを測定.検証の信頼性を高めるためには多くのデータが必要であり,同様の実験を回程度実施. ・疲労破壊の代表例の一つに渦励振によるものがある.この破壊に対しても有効であることを確認するため,水流中の円筒状試験片の渦励振による疲労破壊試験を行った. 手法2.実験によるデータ収集と診断法の適用による有効性の確認 ・ボルトによる継ぎ手が介在する機械要素を製作し,ボルトのトルク変化に対する定常応答加速度データを採取.同様に,摩擦によるこすれが生じる機械要素から定常応答加速度データを採取. ・上記データに提案した診断法2.を適用し,いずれの異常性も検出できることを示した.特に,シミュレーションとの比較を通じて,ボルトの締め付けトルクの大小や摩擦特性が同定できることを明らかにした.
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