地震国である我国においては建築物や産業設備、精密機器などに対しては地震対策を行うことが必須である。これまでの免震・制振装置の研究・開発により、高層ビルや超精密機器に対してはある程度の対策がとられるようになってきたが、装置が高価で大型化するという理由から、一般的な低層建築物や精密機器に対策がなされる例は希というのが現状のようである。 このような背景のもと、我々の研究グループでは、小さな震度では安定した保持力により構造を維持し、設備や構造物にダメージを与えるような力が加わる震度では、地面と基礎の間に相対変位を生じさせて、地震による力の伝達を構造物基礎部において遮断する、いわゆるヒューズ構造を利用する免震装置の開発を行っている。そこでまず、任意のヒューズ特性を引き出すことのできる材料としては、従来の磁性流体の欠点を補った新しい機能性流体FFFの開発を行っている。また、FFFを利用した免振装置の開発を行っている。 FFFは、従来のMR流体に新たにナノメートルオーダの直径を持つ超微粒子粉体、および100〜1000ミクロンの直径を持つスペーサ粒子を混入した新しい機能性流体である。このFFFと永久磁石の安定した磁界、および電磁コイルを組み合わせ、構造が簡単で有効な免震システムの開発・研究を行っている。 現在は、FFFのもつ基本特性(磁場と粘性との相関関係、耐沈降性、摩耗・潤滑特性)の試験、および小型免震装置モデルによる性能試験などを鋭意遂行中である。 FFFの今後の展開としては、免震装置の他に安全弁やトルクリミッタ、また振動を利用した推進装置などへの応用も考えていきたい。
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