研究概要 |
宇宙空間のような微小重力や超高真空状態では高品質の材料が開発でき,不純物の少ない電子部品が製造できることが知られている.このような極限環境状態を利用して生産を行う場合,生産に伴って生じる微粒子の除去や微粒子の輸送・貯蔵といった単位操作が問題になる.さらに,宇宙ではレーダーで探知できない微粒子物体の捕捉や軌道制御が重大な問題になっている. 本研究ではレーザー光の輻射圧を利用して微粒子を動かし,極限環境状態で空間における微粒子の捕捉・移動・停止といった非接触の運動制御技術の開発を行っている.光の輻射圧は,光の持つ輻射エネルギーに比例し,光速度に反比例する.レーザーの発明によって,強力な輻射エネルギーを利用できるようになり,この輻射圧を利用して物体に力を与えることが現実的になっている.現在までにレーザー光輻射圧による方法は,ミクロンオーダーの絶縁粒子や原子を浮遊させることに成功している.しかし,粒子の大きさ,移動,さらには極限状態における浮遊粒子の安定性などに問題がある. そこで,本研究では極限状態を含めた微粒子の運動制御を目的とし,以下の実験によって本研究を遂行している.本年度は実験装置の開発も含め,まずレーザーを利用した超高真空状態での実験粒子の最適制御条件を決定するため,レーザー輻射圧の強度,レーザー光の口径,粒子形状,粒子質量,粒子断面積,粒子の反射係数,レーザーから粒子までの距離などについて調べた. 現在のところ,実験は溶液中でレーザーツイザーシステムの有効性を確認しているところである。まず,粒子にレーザー光を当て,輻射圧を利用して粒子を移動させる.複数のレーザーを用いて,まず粒子を下から上へ浮遊させる.その後,水平や垂直方向の移動および停止などの運動操作ができるような制御をする. 今後は,レーザーの光圧を変え,粒子速度や粒子の安定性など運動状態を詳しく調べる予定である.
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