本研究では、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサによって構成されるセンサシステムを身体に取り付けることによって、平地歩行及び階段昇降時の歩数、歩行距離、歩行速度、階段の角度、段差などを高精度で計測する方法を開発する。また、歩行時酸素摂取量と推定した歩行形態および歩行速度から、上下及び前後方向移動速度と単位体重あたりの消費カロリーとの関係を求めるための近似式の導出を試みる。最後に、3次元歩行時の消費カロリーをリアルタイムで表示する新型3次元歩数計を試作する。平成15年度では、3軸加速度センサ、3軸地磁気センサ、3個の1軸ジャイロを使用して、歩行解析のためのセンサシステムを試作した。また、試作したセンサの精度を確認するため、平地歩行及び階段昇降時の運動身体加速度、角速度、重力加速度の方向を計測し、歩行運動の特徴(歩行パラメータ:歩数、歩行距離、歩行速度、階段の角度、段差、その他)を推定するアルゴリズムを構築した。さらに、構築したアルゴリズムをオフラインで実現するプログラムを作成した。一方、従来使用していた2軸地磁気センサを使用したセンサシステムを使用して、歩行周期と3次元移動量推定誤差との関係を調査した。実験の結果、従来のアルゴリズムでは、水平方向移動距離は歩行周期に依存しないが、上下方向移動距離は歩行周期110[step/min]以下では推定誤差が大きくなることが確認された。さらに、周囲に磁性体が多く存在する環境にて、歩行経路推定の精度について確認する実験を行った。その結果、床面に磁性体が使用されていると、推定歩行経路は実際の経路と大きく異なることが確認された。このことから、どのような場所でも正確に3次元移動量を推定するためには、地磁気の乱れを考慮したアルゴリズムの構築が必要であることが確認された。
|