平成15年度の研究実施計画は、本研究のこれまでの知見に基づき、申請者の所属する研究室において独自に開発されてきた小型ハプティックインタフェースと、バーチャルリアリティ環境を組み合わせた、新たな可搬式作業計測システムを構築し、これを用いて、様々な作業条件下において、多数の作業者の手先の位置・力情報を取得することであった。具体的には、まず、ヘッドマウントディスプレイを設備備品として購入、さらに、ノートコンピュータも新たに購入し、移動可能なシステム構築を行い、作業計測実験を実施する計画であった。 この研究計画に沿って取り組みを始めた。まず、小型ハプティックインタフェースおよびヘッドマウントディスプレイを用いた仮想手作業提示環境を構築した。この際、ヘッドマウントディスプレイには、研究室に既存のものを流用した。このため、用意していた設備備品費を、仮想手作業環境を作成する数値計算用コンピュータと、来年度以降に取り組む予定であったロボットへの作業教示システムのGUI用コンピュータへ使用した。次に、小型ハプティックインタフェースの制御システムの改良へ取り組んだ。これにより、従来まではラックマウント形式だった制御コントローラが、移動可能なサイズと重さへ変更された。 上述したシステム構築により、手作業時の位置・力情報を取得することが容易となった。しかし、いくつかの問題が発生しており、多数の作業者の動作情報の取得にまでは至らなかった。最も大きな問題点は、作業を行う操作者に対する仮想作業環境の現実感が低いということである。バーチャルリアリティ環境へ作業者自身の手先が重ね合わせられないこと、力覚・触覚の提示が不十分であったことが原因であり、来年度はこれら問題点の改善と、多数の操作者の作業動作情報取得実験を実施する。さらに、この計測システムをロボットへの作業教示システムと統合する計画である。
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