研究概要 |
人は作業を行う際,知覚した作業反力に応じて操作の仕方や大きさを変化させる.マスタスレーブシステムでは,力覚スケーリングによつて提示力を変え,操作者に知覚させる反力を調節することができる.これまで多くの場合,スケーリング則は機械のサイズや特惟にもとづいて決定されていた.しかし,スケーリング則を人の知覚特性に合わせて調整することで,システムの操作性を向上させることができると考えられる. 本研究では人の知覚特性に注目して次のことを行った.まず,刺激に対する感覚量がStevensのべき法則を満たす場合に,マスタ側で操作者が感じる感覚量の変化率を調整するスケーリング則を提案した.これはスレーブで発生した刺激の非線形なスケーリング則となる.つぎに,提案したスケーリング則を用いて,弁別閾がWeberの法則を満たす場合にスレーブ側で発生した刺激の変化を知覚可能にするための必要条件を導いた.同時にスケーリング係数の下限値を明らかにした.最後に,指先における力の知覚特性を測定した.弾性係数に対する弁別閾が標準刺激に比例して大きくなり,Weberの法則にしたがっていることを確認した.感覚量が実際の刺激に対して非線形に変化し,Stevensの法則にしたがっていることを確かめた.これらの測定結果を用いて,提案したスケーリング則について考察を行った. 一方,人を含むシステムの安定性解析の基礎として,非線形システムの安定化,および神経振動子モデルを用いた家定な周期運動生成と挙動解析も行った.
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