研究概要 |
人は作業を行う際,知覚した作業反力に応じて操作の仕方や大きさを変化させる.したがって,マスタスレーブシステムのような人間機械系においては,人の感覚特性を考慮する必要がある.しかし,多くの場合,感覚特性はシステム構築後の官能評価と調整において考慮されていた.設計前に人の感覚特性を測定し,あらかじめ機械設計の必要条件として取り込めば,設計時の試行錯誤が減り,より人の感覚特性にあったシステム設計が可能になると考えられる. 本研究では知覚特性のうち,力に対する感覚の基礎測定を行った.本年度は,提示力が時間変化する場合を取り扱った.従来の弁別閾測定では時間をあけて力を提示したときに大きさの違いが知覚できるかを調べていた.しかし,実際の操作においては,提示力が連続時間的に変化する状況が多いと考えられる.そこで,力センサを取り付けた測定用のロボットシステムを構築し,提示力を時間変化させた.その変化率を変えて力覚特性の測定を行った.この結果,同じ力の差でも,提示力がゆっくり変化する場合には判らなくなる結果が得られた.このとき,操作者は力の変化を知覚せずに発生力を変化させているという測定結果が得られた.一方,急激に提示力を変化させると,通常の弁別閾よりも小さな値で力変化が知覚できることが判った.これらの知覚特性にもとづいて,マスタースレーブシステムにおけるスケーリング条件を導き,これまでに得られた結果と比較した.提示力の時間変化率が小さい場合は,知覚させるためのスケーリング係数の下限値は大きくなり,スケーリング条件は厳しくなる. 一方,人間機械系の全体の安定性解析の基礎として,非線形システムの安定化制御に関する研究も行った.
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