研究概要 |
本研究では,人間の手先の器用さをロボットで実現することを目的に,ロボットハンドにより把持された物体と外部環境との接触状態(接触点位置,接触力,接触の種類)を同定する問題を扱った.従来法は,静力学的関係式を用いていたため,ゆっくりしたアクティブセンシング動作が要求されていた.また,未知の接触状態を同定することができるが,接触の種類が変らない場合に限定されていた.本研究課題では,これらの問題点に対する解決法を研究し,以下の成果を得た. 対象物の質量,慣性モーメントおよび接触点での拘束条件を考慮した動力学的関係式を導出した.そして,アクティブセンシングを行なう際に把持対象物が静止していなければならないという制約を取り除いた.この結果,時間的制約があり,すばやく接触状態を同定しなければならない場合への応用が可能となった.本手法は,ハンドに固定されたセンサ原点で生じる角速度,角加速度,力覚情報等を用いており,把持物体が環境上を滑る場合にも応用可能である. 接触状態が遷移する場合の遷移の判定法を提案した.従来の接触状態の同定法がセンシングデータの全てを用いて接触モーメントの固有値を推定していたのに対し,本判定法は窓関数(矩形窓)を用いて新しいデータに限定して推定した.この手法は,データ数を増やすと遷移の判定の精度は上がるが,遷移が実際に発生してから判定するまでの時間が長くなることを,シミュレーションにより明らかにした.また,四つの接触の種類を八つに細分化して同定する手法を用いて判定する手法も検討した.(名古屋工業大学修士論文) 多指ロボットハンド把握系の安定性を解析し,把握系のバネ剛性を導出した.このバネ剛性を用いると力覚,位置・速度情報と接触状態との関係を解析できると考えられる.
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