研究概要 |
仮想空間内において,物体や環境から受ける力の感覚は,視覚や聴覚によるものと同等に重要な情報である.そのような力感覚提示システムは,操作者が常に接触しながら用いるため,高い安全性を有する必要がある.本研究で想定している力覚提示システムは,アクチュエータを用いずブレーキのような受動要素のみを用いるため,装置が暴走して動き出すなどの危険な状態になることは,本質的にありえない.しかし,能動的な力を発することができないので,提示できる力の方向や大きさに制限を受け,結果として提示できる力覚に限界がある. 本研究では,今年度は以下の事を行い,このようなパッシブ型力覚提示システムの力覚提示性能向上を図り,かつ次年度における研究課題を明らかにした. (1)2つのブレーキを用いた既存の2次元2自由度パッシブ型力覚提示装置に対し,冗長個数となるブレーキを追加することで,可操作方向が増加することを示した.また,そのような冗長性を有する機構の設計方法を一般化し,冗長自由度により追加される運動方向を,設計時に任意の向きに指定できることを示した.また,ベルトープーリ機構を用いることにより,追加するブレーキの手先から見た等価慣性への影響を,小さくできることを示した. (2)3つのER流体(Electro-Rheological Fluid)ブレーキを用いた,3次元3自由度のパッシブ型力覚提示装置を開発し,基礎的な力覚提示実験を行った.ERブレーキは応答が高速であるため,力覚提示に有効であることを示せた.一方,2次元2自由度のパッシブ型力覚提示装置と同様に,提示できない仮想物体があることが明らかになった.
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