本研究は、外科手術用マスタ・スレイブマニピュレータ装置の制御系において、アクチュエータのダイナミクスや操作者の不確かさを考慮して制御系を設計し、これを実機に実装することにより、マスタ・スレイブマニピュレータの追従性および操作性が改善されることを実証することを目的としている。 今年度の研究実績の概要を以下に記す。 ・バックステッピング手法により導出した制御則を適用し、1自由度のアーム型マスタ・スレイブマニピュレータ装置に対して制御実験を行った。基礎実験結果から位置、力ともにマスタとスレイブの間の追従誤差の積分値は、アクチュエータのダイナミクスを考慮していない従来法の設計よりも小さくなることが確認できた。 ・上記の成果を、電気学会 産業計測制御研究会、および第42回IEEE Conference on Decision and Controlにて公表した。さらに、日本機械学会論文集C編にも掲載された。 ・基礎実験の結果を外科手術用マスタ・スレイブマニピュレータ装置にて検証するために、外科手術用マスタ・スレイブマニピュレータ装置のプロトタイプの設計を行った。本装置は低侵襲性手術に用いられる多自由度外科用ロボット鉗子をスレイブマニピュレータ、医師が操作する操作部をマスタマニピュレータとしている。従来の外科用ロボット鉗子の問題点を解決するために、液圧を用いた新しい機構の多自由度外科用ロボット鉗子を設計し、現在製作中である。 今後の展開として、まず操作部であるマスタマニピュレータを設計・製作する。次に、外科手術用マスタ・スレイブマニピュレータ装置に提案した制御則を適用して制御実験を行う。
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