本研究の目的は、積層型圧電素子を正三角形状に組み合わせたミニチュアロボットの動作原理を解明することにある。このミニチュアロボットは、圧電素子の伸縮たより生じる進行波の発生や静摩擦力と動摩擦力の差異によって、直線変位と回転変位を行うと考えられている。圧電素子への印加電圧は、基本的にはオンオフ制御とするが、圧電素子の伸縮がミニチュアロボットの機構に与える影響を検討するために、印加電圧波形は方形波、正弦波、三角波を与えた。さまざまな制御波形を与えたときの動作を測定した。 動作原理を確認するために、1Hz程度の低い印加電圧周波数で回転させた。この場合、3個の圧電素子への印加電圧波形は位相の異なった三相信号となる。その結果、以下の傾向が明らかになった。(i)オンオフ制御を行った場合には、回転方向が一方向に限定される傾向がある。(ii)三角波と正弦波を用いた場合には、制御信号の位相を変えることによって回転方向を変えることができる。しかしながら、位相の異なる同一信号を与えて逆回転をさせた場合の変位は異なった。また、試行毎に変位量に差があった。 高速動作を行うためには、kHzオーダの制御周波数を用いる必要がある。そこで、周波数を変えて回転変位の計測を繰り返した。三角波・正弦波・方形波を用いた場合の回転動作を確認することはできたが、試行毎に、また試行場所毎に変位量が異なった。時折、回転方向が異なる現象が見られた。これらの原因はいまのところ明らかになっていない。 これらの相違の原因は試料表面の状態にあると考え、試料表面に潤滑材を塗布した状態で回転変位の計測を行った。比較的粘性の小さい潤滑剤を用いて回転変位を測定したところ、変位のばらつきは減少したものの、回転方向が逆転する現象が引き続き観察された。 さらに、ミニチュアロボットの電気的現象を計測するためには非接触計測が望まれる。そこで、ミニチュアロボットの電流を非接触温度計を用いて計測する方法を提案し、有用性を明らかにした。
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